第一章 冷血と呼ばれる男性(ひと)

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 冗談めいた口調に苦笑したまま、みんなで顔を見あわせた。  柚稀も彼のことを嫌っている……好きな人がほとんどいない。  ものすごく厳しいのだ。  今の企画部部長も常務の事件*があるまでは、恭貴と同じように厳しいと噂されるほどの社員だったと聞いた。  でも、恭貴はそれ以上と言われている。  一度目のミスの時はそれほど厳しくないけれど、二度目からはベテラン社員でさえ涙目になるほどだ。  円佳も一度厳しく注意されている。  有給休暇の確認を忘れたのだ。二回。  入ったばかりの社員でも容赦しない恭貴に、円佳は彼のデスクの前で小さくなっていた。  〝一か月は何日だ。  数も数えられないなら小学校からやり直せ。ただし、この書類を訂正してからだ〟  涙をこらえて円佳は深く頭を下げた。 *企画部部長は前常務派の中心メンバーで、事件に巻き込まれています。 野心の向こうに https://estar.jp/novels/25784530 は、その事件の話です。
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