第一章 冷血と呼ばれる男性(ひと)

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 この日は水曜日だった。  週末から連休が始まるので、金曜日までに書類を揃えないとならない。どうしても残業するしかなかった。  柚稀も(入社の時とは違う)先輩も用事ということだったので、円佳だけが居残って書類を作成していた。  柚稀は間違いなく用事だろうけれど、先輩は分からない。残業を避けたいという空気を感じたから。でも、それは恭貴には言えなかった。  二人が用事だと聞いた彼は何度か頷いた。  「そうか……分かった。終わり次第すぐに帰るように」  「はい、分かりました」  素直に言ってプリンターに視線を向けた。  半分程度印刷されていて、もう少しで終わりそうだ。  「笹田(ささだ)さんは意外に企画部が合いそうだな」  「え……」  エリート部署で有名な企画部に合うと言われたら、普通の社員は驚く。円佳も驚いた。
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