第一章 冷血と呼ばれる男性(ひと)

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 「こう言うと失礼になるだろうが、意外に指示待ち人間でないからな」  「ええ……まぁ……」  この部署は、一か月単位で仕事が回る。なので、慣れると楽になる。  円佳は二年目に入った社員だ。上司の指示を待っているようでは困るだろう。後輩もできたのだから。  「一覧表、以前よりもずっと見やすくなった。  駄目とは言わないが、他の人間なら同じフォーマットを続けるはずだ。  実際、変更は初めてだからな」  褒められたと分かると、さっきとは違う意味で顔が赤くなった。  「総務はもっと工夫していい部署だと思う。  慣れたものを変えるのが大変くらいは私も理解してるが、面倒と考える社員ばかりだからな」  やっぱり辛辣(しんらつ)だ。  でも、言っていることは分かる。フォーマットに不満があっても慣れると、そのままでも特に問題を感じなくなる。  そうなると、現状維持でいいと考えるはずだ。
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