第一章 冷血と呼ばれる男性(ひと)

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 「円佳(まどか)、異動なの?」  同期の友人に確認された円佳は頷いた。  下半期の異動で、彼女は今の総務部から営業部に移ると決まった。  一般職の彼女は営業事務ということだけれど、意外に思ったのは事実だった。  「うん。ちょっとびっくりだけどね」  答えに、柚稀(ゆずき)は共感するように笑った。  「でもさ、栄転じゃない。すごいよ」  昇進するわけでないから栄転ではないと思うけれど、円佳は嬉しかった。  営業部には、彼女が秘かに想いを寄せる男性が部長として業務をしている。  柚希も気づいたようで、少し渋い表情に変わった。  「あ、崎本(さきもと)部長のとこか……また一緒なのは災難だね~」  しみじみと彼女が言うから円佳は苦笑した。  彼は、半年前になる新年度の異動で、営業部の部長として、総務部課長からの昇進と同時に移っていた。
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