第八章 癒しの時間とペアリング

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 志信(しのぶ)が苦笑しながら返した。  「どうしようもない考えだけど、問題行動じゃないし放っておくしかないと思うね。  やってることは営業として正しいわけだし。  でも、円佳があの人を意識する日が来る可能性はゼロだと思うけどね」  本人も同じ思いを持った。  円佳が瑛都を男性として意識する可能性は、完全にゼロだろう。  でも、困惑はあるけれど、売り上げが伸びれば恭貴の実績にもなる。それに関しては歓迎できるから、志信の言うとおり、放っておくのがいいと思う。  「うん。ちょっと無理だけど、そこは聞かなかったことにする。  仕事を真剣にするのはいいことだから」  円佳が言うと、横の柚稀がいたずらに笑って、友人の左手薬指を(かか)げてきた。  「これ見て(あきら)めないって、ある意味すごい。  もしかしたら結構やるかもね」  みんなが笑って、微妙になった空気が(ゆる)んだ。
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