第九章 氷原に咲く春告げの花

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 「あの……一人で大丈夫です」  弱く反論したけれど、彼は円佳を簡単に抱きあげると、バスルームに向かった。  あの事件以来、恭貴は円佳を抱いていない。  当然とは思っているようだけれど、欲求不満はあるだろう。  そんな時だから、一緒にお風呂に入って、少しでも直接肌を触れ合わせたいらしい。  申し訳なさはあるから、抵抗を続けられない。  二人で入っても充分な広さの浴槽を、円佳は恨めしく感じた……  結局、風呂に入っている間に眠ってしまった円佳は、翌日の朝、何も着ていないことに気づくと、全身を赤くした。
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