第九章 氷原に咲く春告げの花

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 彼の両親が到着したようだ。  恭貴と一緒に円佳は玄関へと向かっていた。  「元気そうね、恭貴。  きちんと食べてるようで安心ね」  母親の心配は、男女や年齢に関係ないらしいと円佳は思った。彼女の母親も同じようなことをよく言う。  恭貴と父親は似ているけれど、印象が違う。  冷たいイケメンの息子に対して、父親は温厚そうで平穏な雰囲気。少し意外な感じだ。  二人が円佳に視線を向けてくると、恥ずかしくなって(うつむ)いてしまった。  「こんにちは、円佳さん。  これからは家族になるんですから遠慮はなしよ」  「はい……はじめまして。笹田(ささだ)円佳です。よろしくお願いします」  深く一礼すると、三人が笑いだした。
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