第九章 氷原に咲く春告げの花

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 違う、という意味は、両親が部屋に入って分かった。  「ずいぶん、印象が変わったわね……自分の部屋にそっくりじゃない。やっぱり、こういうのが落ちつくのね」  「ああ、飾り立てるのは駄目だな。落ちつかない」  桃香の趣味が分かる会話だ。  彼女はプライベートでは甘えるタイプで、インテリアも可愛いものが好きらしい。  男性も可愛いタイプが好きと分かる。瑛都を好きになったわけだ。  「でも、円佳さんはこんな殺風景な部屋で大丈夫?」  前の妻の痕跡がないだけでなく、円佳の好みもまったく見えない。  リビングで目立つのは、見舞いにもらったプリザーブドフラワーくらい。気になるのは分かる。  でも、円佳もシンプルな部屋が好みだ。  「はい。私も、物はあまり置かないので……」  同じ好みだから、同居の時、レイアウト他の問題がなかった。
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