第九章 氷原に咲く春告げの花

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 恭貴も、円佳の部屋を訪れた時に気づいただろう。自分の好みと似ていると。  余計に交際しても大丈夫と思ったはず。  「あら、それならちょうどいいのね。  食べ物もだけど、好みが全然合わないって、やっぱり難しいものね」  恭貴と桃香の結婚生活が破綻(はたん)した、理由の一つだったのかもしれない。  それがあるからだと思うけれど、恭貴の両親から安堵の空気が伝わってくる。  「それじゃ、そろそろ出ようか」  息子の声に二人は頷いた。  恭貴と円佳の相性の良さを実感したようで、表情がさらに明るくなっていた。
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