第九章 氷原に咲く春告げの花

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 母親が全員分の緑茶をテーブルに置くと、恭貴は一つ息をついて、円佳の家族に声を掛けた。  「円佳さんと二人で資金を貯めて、来年か再来年の始めには結婚と考えております。  交際して一年()ってませんから、早いとお思いかもしれませんが、円佳さんを知れば知るほど、人生を共にしたいと強く感じるようになりました。  どうか、お認めください」  横のソファに座っている彼の両親が、恭貴と一緒に頭を下げた。もちろん、円佳も。  「顔をお上げください」  その声に円佳たちが顔を上げると、両親が頷き合っていた。  「まだまだ頼りない娘ですけど、こちらこそ、円佳をお願いいたします」  そして、円佳に声を掛けてきた。  「恭貴くんを助けて、笑顔のある家庭を作るんだぞ」  父親の言葉に、円佳は決意するように返した。  「大丈夫。恭貴さんがリラックスできるように頑張るから」
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