第九章 氷原に咲く春告げの花

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 挨拶が一段落すると、母親同士で会話が盛りあがった。  恭貴はできるだけ早い結婚を望んだから、具体的な話をしても大丈夫。  「やっぱり東京がいいんじゃないかと思うんです。  これからずっとこちらで暮らすでしょうから。  親戚にも東京の人間は多いので、問題はないですし」  総合職の恭貴は、本来なら転勤がある。でも、桃香と瑛都の不倫の被害者ということで、転勤免除を受けている。  でも、再婚したら、どうなるかは分からない。  配偶者は同行できるので、もし転勤になれば一緒に行くことになる。不安がないとは言わないけれど、恭貴と一緒なら大丈夫とも思う。  それは結婚してから考えても遅くない。  今、考えないとならないのは、どこで結婚式を行うか。  恭貴は東京で働いていて、円佳の地元も東京。会社の人を呼ぶことを考えると、彼の地元よりも東京がいいのではと思った。  でも、意外だけれど恭貴が東京での挙式に反対してきた。  「東京から離れたところで挙式だけをして、披露宴もなしにしたいと考えてます」
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