第九章 氷原に咲く春告げの花

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 ***  彼の両親をホテルに送って、翌日の新幹線の出発時刻を聞いてから二人はマンションに戻った。  途中のスーパーでデリカを購入した。  さすがに結婚の挨拶は疲れる。両方の家族が賛成していても緊張するのは変わらない。だから、料理を作る気力が出なかった。  車を指定場所に()めて、二人は少し遠回りをした。  落ちついてから部屋に入りたかった。  近くの公園の桜はとっくに終わったけれど、緑の葉が風に揺れる光景は、見ているだけで(いや)される。  少し前の満開の時は二人で見に行った。  公園が桜に包まれているようだった。  意外に知られていて、花を見に来る人は多かったけれど、公園での宴会は禁止。  当然、歩きながらの花見なので優雅な雰囲気でもあった。
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