第一章 冷血と呼ばれる男性(ひと)

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 ***  その日の社員食堂で、先輩社員は親しい同僚たちに、泣きながら恭貴の冷酷な態度を訴えているようだ。  柚稀や同期の社員たちとランチを食べている円佳の耳にも、(かす)かに声が流れてくる。  「やっぱ、冷血課長だね。人前で言うなんてさ。  でも、良かったじゃん。そんな奴と離れられるんだから」  その言葉に先輩は涙が止まったのか、顔を上げて何度も頷いた。  「そうだよね。移ったら、あんなムカつく奴の顔見ないでいいんだ。  あたし、何に落ち込んでたんだろ。  ね、帰りに飲みに行かない?冷血課長と別れられるお祝いだから」  先輩の言葉を聞いた柚稀が呆れたように言った。  「……あんなんだから、どっかに飛ばされるのに。おめでたい性格だよ」  彼女の言葉に、居合わせた同期が苦笑した。  先輩に対しての遠慮ない評価に笑うしかないのだろう。円佳も同じだった。  「でも、誰が来てもあれよりはマシだろうから、こっちもめでたいわ。  冷血課長にかんぱ~い」
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