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その日の社員食堂で、先輩社員は親しい同僚たちに、泣きながら恭貴の冷酷な態度を訴えているようだ。
柚稀や同期の社員たちとランチを食べている円佳の耳にも、微かに声が流れてくる。
「やっぱ、冷血課長だね。人前で言うなんてさ。
でも、良かったじゃん。そんな奴と離れられるんだから」
その言葉に先輩は涙が止まったのか、顔を上げて何度も頷いた。
「そうだよね。移ったら、あんなムカつく奴の顔見ないでいいんだ。
あたし、何に落ち込んでたんだろ。
ね、帰りに飲みに行かない?冷血課長と別れられるお祝いだから」
先輩の言葉を聞いた柚稀が呆れたように言った。
「……あんなんだから、どっかに飛ばされるのに。おめでたい性格だよ」
彼女の言葉に、居合わせた同期が苦笑した。
先輩に対しての遠慮ない評価に笑うしかないのだろう。円佳も同じだった。
「でも、誰が来てもあれよりはマシだろうから、こっちもめでたいわ。
冷血課長にかんぱ~い」
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