第一章 嵐の前の不安~途切れた友情

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 夕食が終わると、花野(かの)義隆(よしたか)に視線で合図をした。  寝る前にいろいろな会話をするのは、新堂(しんどう)夫妻の習慣だ。ほとんどが仕事のことだが、子供たちのことも当然話す。  三人の子供がいて、長女は中学生。進路を始めとする子供たちの将来を、親として考える時は多い。  それも親の楽しみの一つだが、仕事に関しては、そう言っていられないことが増えてきた。  夫婦で視線の合図をする時は、仕事で気になることを話したい時。  分かっている義隆は、花野以外には気づかれない程度に小さく頷いた。  中学生になって、勉強に忙しい結愛(ゆあ)が自室に入る頃、長男の望夢(のぞむ)と次女の美悠(みゆ)を寝かせる。  下の二人の子供は、まだ夫婦の寝室で休むから、両親のどちらかが寝かせる時、もう一人が家事をする。  キャリアの二人だから、家事もほぼ半分ずつ(にな)っている。  今日は義隆が寝かせに行ったので、花野は残った家事を始めた。
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