第一章 嵐の前の不安~途切れた友情

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 ***  「何かあった?」  新堂家の子供たちは寝つきが良くて、ベッドに入れるとすぐに休んでくれる。親としては助かるし、夫婦の会話もしやすい。  でも、花野が合図をしているから、義隆が心配そうだ。  「うん……小西(こにし)部長、採用者の構成に介入してきたの。  営業に適性のある人間をもっと採用してほしいって。常務も言ってるそうよ。聞いてない?」  小西部長-営業部部長が常務の権威を利用して、人事部部長へ採用に関する圧力を掛けてくる。聞いた義隆が渋い表情になった。  「僕には言ってきてない。  こっちに言うと、反対されるのは分かってるんじゃないかな。  営業だけ特別扱いするのは問題だって、常務も分かって言ってるだろうし……  ただ……売れてる時に攻勢かけないとならないとは言われてる。間違ってはいないから……」  義隆の口調がためらいがちだ。その気持ちは花野にも分かった。  今は人事部に所属する花野だが、営業部出身。
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