第一章 嵐の前の不安~途切れた友情

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 「私がいた時とは違う意味で、一課と二課、危うい感じよね。人事部の会議、結構困ってるのよ。  横滑りが難しくなったから」  花野が営業部に所属していた頃、会社への影響力が大きかったのは、完全に営業一課だった。  当然だろう。あの頃は取次が売上の大半を占めていた。  だから、一課には二課を軽んじる社員が少なくなかった。二課の社員は、おそらく不満を()めていたはずだ。  当時から二課の社員だった小西は、その不満を晴らしている部分もあるだろう。  気持ちは分からなくはないが、今の小西は営業部部長。個人的な恨みで行動されては困るのだ。  各部署から人事異動に関する要望の調整をする人事部としては、一課と二課の間に、反目に近い対立があることは当然把握している。  なので、営業部の社員が固定されつつあるのが問題視されていた。  人事部部長となった花野は、現在の部署に所属する前は営業部の部長代理だった。なので、余計にとりなしを期待されるから困るのだ。  内部対立を起こす営業部を、ほとんどの部署の社員が不安そうに見守っていることを常務派の人間は知らない。
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