第一章 嵐の前の不安~途切れた友情

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 「小西部長、二課に肩入れして(あお)ってるから、一課の課長がこっちに不満を申し立ててくるし……」  一課の社員が、部長が自分たちを軽視する態度に苛立(いらだ)つのは分かる。  MVブランド展開前に所属していた営業一課の社員は、ほとんどが異動または定年を含む退職をした。  つまり、今、所属する社員は、二課を軽視したことのない者ばかりだ。  過去のできごとが原因と知れば、もっと怒るだろう。  でも、小西の強気の理由は、それだけでなく、MVブランドの好調にあるのも間違いない。  事務用品の卸売りよりも、自社製品の販売利益のほうが大きくなるのは当然だ。MVブランドが売れれば、利益が増大するので会社にとっては貢献度が高くなる。  利益率が良くなれば株主は満足するから、急激な業態変化に対しても理解を示してくる。  実際、株主総会で、自社製品-MVブランドをもっと展開するべきという意見が大株主から提案されるところを、花野は見ている。
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