第三章 嵐の始まり~信じられない情報

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 「は?」  思わず一言しか出ない大翔(ひろと)に向かって、同期で、今は和香(わか)と同じ部署で働いている彰良(あきら)が声をひそめてきた。  社員食堂で彼は友人から、常務派の誰かが、彼を告発したと聞かされたのだ。  午前、社内が騒がしいのは気づいていたけど理由が分からなかったから、聞いて動揺するのは当たり前だ。  「ちょっと時間作れるか?その時に詳しく話す。  俺は昼から有休取ったんだ。由莉(ゆり)璃子(りこ)に会いに行くつもりでさ」  彰良は、二人の同期の由莉と結婚して、最近娘が生まれたばかりだ。  大翔もすぐに見に行っている。二人に似ている娘は可愛い-真衣(まい)ほどでないけど……すっかり親バカな大翔だ……  でも、今はそれどころではない。  「分かった。一緒に行くよ」  答えながら周りを見ると、社員食堂は普段とは違って、テーブルごとにひそひそと低い声でささやき合っている。  大翔に対する視線も感じる。  常務派に問題が発生したとすれば、彼の妻である和香も当事者で、大翔にも影響が出るかもしれない。
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