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「大丈夫?」
「まぁ、多分。これで最後だし、いつもと違って思い切って色々詰め込んだから。今の私は残り滓みたいなもの」
「くっついていい?」
「いいよ」
小さな脚をよたよた動かす。背中が重くてうまくバランスが取れない。
なんとかふらふら動いて彼女のカサカサになった腕の間に収まった。
俺のうちがわに彼女がいる。そとがわの目の前にも彼女がいる。変な感じだ。
小学校で芋虫を解剖した時のことを思い出す。
芋虫の皮をむくとそこには芋虫と同じような形の緑色の内蔵といろいろな線があった。
俺に入った彼女は今、俺の内蔵と皮の間の隙間にいるんだろう。俺の体の中から俺を食べる。
それはやっぱり、なにか妙な感じがしたけど、そんなに嫌ではない感じ。人の皮もなくなって、芋虫の皮もなくなって、それでさようなら。彼女が全てを食べてくれるなら、何かの役にたっている気がして、なんとなく満足。
「どのくらいで孵化するの?」
「多分、今晩には」
「今から蛹になっちゃだめかな。どろどろになったほうが食べやすそうな気がする」
「どうだろう。でも外側が固くなると外に出づらくなるのかな。この子のことを考えてくれてありがとう」
「この子と言うか、君というか。でもそれもそうか。じゃあやめとく」
彼女は僕が糸で包んだ飴玉を1個ずつゆっくりと食べた。
2つ目に手を伸ばす頃には大分動くのが大変そうになっていて。3つ目は俺がなんとか動いて彼女の口に収めた。
4つ目を口に押し込めるころにはなんとなく窓の外が少し暗くなっていた。それで俺の中で俺とは違うものがもぞもぞ動いているようにを感じた。
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