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色々ぼんやりして億劫になってきたけど、何かこれはこれで幸せな気分だ。俺が子供を育てるとは思わなかった。自分で思っていたより俺は甲斐甲斐しいのかもしれない。
小さな彼女は今100センチくらいの大きさまで育っている。といっても幼児なわけではなく、彼女が大人の姿のままでその縮尺まで縮んだ感じ。
俺と目の前のひからびた彼女を食べきったら、おそらく140センチくらいにはなるだろう。もとの彼女には少し足りないけど、彼女の服をベルトで絞れば着れそうだ。
俺は彼女がこの部屋から出ていくのに必要な知識を教えていた。多分俺たちが全部食べられてしまうにはもうそんなに時間はなくて。とりあえずパソコンの使い方だけ教えて、あとは自力学習してもらうしかない。
外側の彼女は多分、僕と一緒に死なないのなら、小さな彼女が孵化する前にこの部屋をあとにしたんだろう。そうすれば小さな彼女は生きていくのは難しかった気がする。多分目の前の彼女が産まれたときと違って今の世界は複雑で。竹から生まれたなんておかしな理屈は受け入れられない。
俺は小さい彼女を目の前の彼女と同じ名前で呼ぶ。
俺は目の前の彼女と一緒に死んで、新しい彼女の糧になる。
こんな変な人生は可か不可かというとゆるやかに可で。それはなにか、幸せな感じ。
了
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