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赤い飴。この間彼女と見た紅葉の色。これが最後の飴。
「1000年も姿が変わらないの?」
「そう、あなたから産まれてくるのも、ミニチュアサイズのこの姿」
「変なの。でも僕から生まれてくる君が君と同じものなら多分好きかな。だから、食べられてもいいや」
ふう、と息がかかる。
「あなたは私のどこが好きなの」
「一緒にいてくれたところ」
「それだけ?」
「まあ、俺が一緒にいたいと思える人は実はあんまりいないから。君は一緒にいて落ち着いたんだ。距離感がちょうどよかったんだと思う」
「距離感?」
「そう。絶対的にはそんなでもないけど、相対的にはとても好き。君以上に好きなものはなにもない」
「死んでしまう今でもそう思ってる?」
「うん、まあ、相対的に」
「どう捉えていいのかよくわからないわ。本当に変な人ねぇ」
飴玉が4個、真っ白になった。俺にはもう来ない、次の冬の雪の色。
「じゃぁ、そろそろ、ちょっと失礼して」
彼女が起き上がって視界から消える。俺の両脇に彼女の足がみえる。上は見えない。芋虫は少し不便だ。
しばらくして背中がつぷと破ける感触と、体の中に何か温かいものがふつふつと入ってくる感触。
背中に違和感がある。自分じゃないものが入り込んだ。痛くは、ない。
「ふう」
俺の隣に倒れ込んだ彼女は何かカサカサに乾いていた。
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