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第一検温所
「アノ人って冷たいよね」・・アノ人って、その人の体温が他の誰よりも低い、つまり低体温症の人を指さして言っているのだろうか?・・
それとも、その人の「やることなすこと」は勿論、言動も含めた印象を指して言っているのだろうか?
実は主人公の私の場合を例えるとそのどちらにも相当するから語るには超打って付けな人物なのかも知れない。
そう言えば、このコロナ禍になってからと云うもの、私たち夫婦は毎朝検温し、これまでもなお継続している。更にその数値をPCのエクセルでデーターに管理している。
家内の平均体温が36.2度で私が35.1度である。これは昨年7月の一か月の検温結果だ。なんと同じ環境で生活している高齢者二人が、1℃もの差があるなんて訳も分からぬどうしが顔を見合わせ驚いたものだ。
・・・これから先は三か月ごとに私が検診して貰っているある大学病院での出来事である。
その日、私はいつものように診察と薬を処方してもらうために病院の玄関にたどり着いた。
だがいつもと少し様子が違った。玄関口が異様に混雑していたのである。
(なんや!何がどない、なっとんやろう?・・)
勿論、来院の目的は検診である。だが異様な混雑ともなると何が有ったのか不安半分、好奇心も半分のままいつの間にかその列に並んでいた。
(なんや・・検温かいな⁉ 感染防止の検温で流れが止められてるんや。)
いつも通り今朝も朝食後の検温を済ませていた私は、検温の関所に何のためらいもなくその列に並んだ。
「お早うございます。感染防止のためご協力お願います、失礼します・・」
何名かのスタッフの中、一人の女性看護師が私の前に立ちはだかった。そして挨拶をしたかと思うと私のオデコに検温器を近づけてきた。だが・・
「・・すみません、もう一度測り直しますので、う~ん・・すみませんもう一度・・」と
恐縮しながらも三度ばかり測り直していた。だが・・
「すみません、少しお待ちください!」
慌てた様子のその看護師は私に背を向けるなり検温器を片手に小走りでロビーに駆け込んで行った。
ガラス越しに見えるその様子からは、予め待機していたであろう少し年輩の看護師さんと何やら相談を始めた。
(えっ、もしかして私の体温のことやろか?・・何回も検温しとったもんな・・)
暫くすると、その少し年輩の看護師さんが私の傍にやってきてそっと囁いた。
「ご主人さん、お手数ですがちょっとこちらへ来ていただけますか?」
(なんでやこれ?・・お~ぃ何処へ連れてくつもりや~⁉)
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