第二検温所

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 私は、この病院を訪れるときにはいつも手提げ袋を持ち歩いている。これまでの検査結果などを収めたクリアケースを入れるためだ。今日はそのケースにこれまでの体温測定を印刷したエクセルデーターも準備をして来た。 もしもを想定して、耳鼻咽喉科で体温の話になったときの直近三か月のデーターである。 つまり、異常に低い平均値だけではなく低い日もあれば高い日もあることを証明したかったからである。 「へーこれは? んっ・・これってここ三か月分ですよね?・・この平均35.1ってところが、患者様の平均体温ですね・・ホント低いですね?」 「ネットで検索したんですけど、低体温症って有るんですね⁉ 私はそんなには気にはしてなかったんやけど、低体温症で死に至ることも有るって解説してたもんで・・受診した方がええのかね?」 「そうですか?・・暫くお待ちいただいても・・あっ泌尿器科の予約のお時間、大丈夫ですか?」 「えぇ、一時間以上余裕みて来てますので大丈夫です。」  (やった!総合診療か何処か知らんけど、とにかく相談のために走ってくれたんや。)  これまで、この低体温の件では特に自覚症状が有る訳でもなく、この程度で病院を訪れていいものか、正直なところ迷っていたからでもある。 だがそのワクワク感も残念ながら5分ほどで見事裏切られたのである。 「お待たせしましてすみません、いろいろ相談したんですが、今日のところ3番窓口で耳鼻咽喉科の初診手続きをしてください。その際、泌尿器科の受付も同時にしてもらえますので・・」 「あっそうですか・・分かりました、お手数かけてすみませんでした。」  やっぱりアカンかったか⁉どっちみち耳鼻咽喉科の初診手続きは自宅を出る前から覚悟はしていた訳で、お手数かけられたのはむしろこちらの方だった。 幸い泌尿器科の予約までまだ十分な余裕が有ったので、耳鼻咽喉科を先に受診することにした。
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