君が残していったもの

1/4
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

君が残していったもの

 恋愛に向かないというよりも、人とわかり合うことに向かない性格なのだと思う。    朝食は二日ごとに交代で作り、洗濯は彼女が、風呂掃除は僕が。  片付けは毎週末に二人でして、家具選びは必ず二人で話し合う。  互いの誕生日には贈り物。なんらかの記念日には少し遠出する。  そんな日々が三年だか四年だか続き、彼女が別れようと言ったので、僕らは別れた。  「別々に生きていきいましょう」と言った彼女は準備をしていたらしく、旅行の際に使っていた鞄に衣服や貴重品を詰め、それを足下に置いていた。心の準備も身辺整理も手つかずだった僕は、ただ「急な話だな」と思った。  彼女はそう言ったきり黙ってうつむいてしまった。  おそらく理由を聞いてほしいのだろう。  だから「理由を聞かせてくれるかい」と言った。  彼女はひどく傷ついた顔をして「貴方のそういうところが、いや」と答えた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!