ペンフレンド2

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ペンフレンド2

そき姉へ】 この前はごめん。ケガとかしてなかったか?大丈夫か?ほんとごめん。 今度は気をつける。 あと、図書館の本読んだ。詩も選んだ。これ。 ――――せこが来て 臥ししかたはら 寒き夜は 我が手枕を 我でして寝る―――― この詩ってセックスレスの詩らしーぜ。 せこは夫って意味で、夫が来たけどセックスしねえから、腕枕もなくて、仕方ねえから自分の腕で腕枕するわ!って意味だって。 こんな大昔からセックスレスってあったんだなー。 昔の奴らは今より原始的だから毎日サカってんのかと思ってた。 あ、でもさ。これ夫じゃなくてもよくあることだよな。 いつも近くにいる奴だけどそりが合わねえみたいなこと。 つか現実そんなことばっかだ。 なあ、そういうときそき姉だったらどうする?周りのやつがだいたいムカつく時。 あ、ちなみに三つ詩を選べって言ってたけど、後の二つはそき姉が図書館で教えてくれたやつってことでよろしく。 あと質問。そき姉ってホントにセックスしたことないの? キスは?あと何カップ?Gくらい?あ、あとそき姉は前、小さいときに車椅子になったって言ってたけど、なんで?ビョーキ?次いつ会える? 【神経衰弱の天才さんへ】 ごきげんよう。 今年もあとわずかとなったね。前回、骨折したところの肌がギプスで荒れてしまったと言っていたが、治ってきたかい。 ちなみにこの前の件について、この前も言ったが、君が謝る必要はまったくないんだ。 私は元気だし、検査の結果、どこにも異常はなかったから安心してくれ。 ただ……正直、前回君に言われたことで、私も少し反省したんだ。 もし介助を頼むなら、もっと細かくいろいろ説明すべきだったね。 君に罪悪感を抱かせてしまって申し訳ない。 次回は気をつけるから、これに懲りずに、またよろしく頼むよ。 詩を選んでくれたんだね。ありがとう。 和泉式部の華やかなイメージから離れた、寂寥を感じさせる詩を君が選んだことは少し意外だった。 しかし、君の示唆に富んだ洞察を読んで、納得したよ。 君はそういう視点でこの詩を選んだのだね。 私の場合か。そうだね、私も出来ればどこでも、誰とでも仲良く過ごしたいと思う。 しかし現実的にはそれが不可能なこともあるね。 それが出来ない場合――――もちろん、仲良くする努力を自分なりにして――――それでも難しい場合は、場所そのものを変えてみるかな。 この世界はいつでも、自分が思っているよりは広いものだと私は思っている。 勿論、自分が新天地で受け入れられるという保証はないが、 視野を広げていけば、いつか必ずどこかで、自分に合った場所や人と巡り会えると私は信じているよ。 さて、君からの質問も読ませて貰った。 同じ質問を、角度を変えて投げかけてきたね。 なかなか考えたね。 そして今までの質問が「経験があったか?」なのに対し、 今は「経験がなかったか?」という質問になっている事も興味深い。 これは最近、私に深い関係の人間がいたという可能性をどこかで見いだしたということだろうか? なぜそう考えが変わったのか、今度訊かせてくれ。 ちなみに、私の足が動かなくなったのは4歳の時だそうだ。 高いところから落ちて、脊髄を損傷したのだよ。 その時のことは、はっきり言ってよく覚えていないんだ。 ただ、ベッドの上のもうろうとした意識の中で、 母が本当に心配そうに私の顔を何度ものぞき込んでいる様子は断片的に覚えている。 今年の冬は寒さが厳しいらしいね。 君も温かくして、風邪などひかないように。 そしてひとつ君に、残念な報告をしなくてはならない。 近頃、今私は少々忙しく、次に会えるのは少し先になりそうなのだ。 年が明けて、バレンタインの頃くらいか。 しかし手紙はいつでも大歓迎だよ。 そうそう、君は私の選んだ二首を合わせて三首が気に入った、と書いてあるが、 ぜひともほかの二首について君独自の感想を聞かせてくれ。 君の考えていることを、より深く知りたい。 ではまた。
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