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一瞬、何が起こったかわからなかった。
彼の腹から噴き出した大量の血で我に返り叫び声をあげた。
私そっくりのその女は返り血を浴びながら微笑んだ。
「やっとこの時が来た」
物音で隣の住人がドアを開けて出てきた。
惨状を見て驚いた住人は声も出せず震える手でどこかへ電話している。
おそらく警察か救急だろう。
「私はこのためにあんたに会いに来た」
「な・・・なな・・?」
震える唇がうまく言葉を紡ぎだせない。
「この男はヤバイやつだから、いきなり来て別れろって言ってもあんたは聞かないでしょ?だからね・・・」
そう言いながら、私の姿をした彼女は風景に溶け込みだした。
「殺しにきたの」
そう呟く頃には、彼女の姿は消えていた。
茫然としている私の耳にサイレンの音が遠くから響く。
あわただしく階段を上る靴音。
そして、隣の住人の男に指差された私。
・・・私じゃない
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