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私は刑務所に収監された。
もちろん、自分がやったことではないと訴え続けた。
防犯カメラも見てもらった。
だが、防犯カメラには、私が居るのだ。
誰でもない、紛れもない私。包丁にはもちろん私の指紋。
どう言い逃れしても無駄だった。
何故私がこんなひどい目に遭わなければならないのだろう。
警察に動機を聞かれても、彼の事を好きだったし、彼を殺す理由がどこにも見当たらないから言いようがない。
刑事は溜息をつきつつ、私に告げた。
「でも、良かったね。君は殺人犯にはならずに済んだ」
「えっ?」
「彼は一命をとりとめたよ。君の罪状は傷害、殺人未遂ってところか」
嬉しいはずなのに、私はショックを受けていた。
何故?目の前の世界がグルグルと回り始めた。
鬼のような形相で私を殴りつける彼。
私は部屋の隅で小さく怯えながら自分を守っている。
何これ?
そして、彼の手には包丁が握られて。
鈍い痛み。
やっとわかった?
私は未来から自分を救いに来たの。
ボロボロの体で私の前に立ち尽くす私。
でも、ダメだったみたいね。
私に振り下ろされる包丁。
これは、あなたの記憶。
そして、私の。
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