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消え去りそうな系譜
廻る廻る運命の輪。
繋がる繋がる運命の糸。
白き竜であるルーチェとトリノ一族のウルティモが番になってから二百年程経った頃の話。
世界は少しだけ変化を見せ始めていた。
*****
僕はソル。もうすぐ116歳になる。
うちの両親は白き竜とトリノ一族の末裔同士の番だ。
白き竜と番った母さまも寿命を父さまと分け合って普通の人間より大分長生きなんだって。今二百年とちょっと生きてる。
白き竜の寿命は五百年ほどで――だからそろそろ…なんて真剣な顔をした父さまに昨夜言われてしまった。
父さまの父さまもお祖父さまも不幸に見舞われて若くしてお亡くなりになられて、母さまの一族は――――。口にできないくらい恐ろしい目にあってる。
そのせいでというか母さまがひどい目にあって、父さまは人間の事をものすごく憎み嫌っている。
だけど母さまも特殊な力を持った人間なんだよ?
今では一族と呼べるのは、白き竜の父さまとトリノ一族の母さまと二人の子どもの僕だけ。
だから父さまたちが亡くなってしまったら僕一人だけが残されちゃう。
僕の背中には母さまと同じ羽根の紋様が刻まれていて、竜体もとることができるいわば超進化完全体だ。その代わり能力はそんなに高くはないんだけどね。
今まではどちらか一方の特徴を受け継いだ子が生まれていたらしいから両方の特徴を併せ持つ僕はかなり珍しいんだって。
白き竜とトリノ一族は番う運命にあるらしいけど、僕には相手となるどちらの一族も存在しない。
超進化完全体って言っても番う相手がいなければ、父さまたちが亡くなってしまったら僕はひとりぼっちで長い時を生きなくてはいけない。
目の前にはいつも仲良く寄り添い合う両親の姿がある。
僕はこのまま誰とも番わず何百年もひとりぼっちで、そして僕という存在は人知れず消えていってしまうの?
―――――そんなのは嫌だから、僕はある事を決めたんだ。
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