碧の匣

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────────床が、見えない。 あの忌々しい水槽の中と同じ一面の碧が、床を見えないようにしていた。これではまるで、私が碧の中に居るみたいではないか。 ────そんな筈はない。あの視界いっぱいの碧が、私の周りを漂っているということは、それは、つまり────………… ────あれだけうるさかった水音は、私が動くのをやめた途端、止んでいた。 それが何よりの証拠だった。 私は、外から水槽を見ていたのではない。 水槽の中から外を覗いていたのだ。茫然自失する私に構わず、声がした。 「────────実験成功だ。これより第三段階、記憶挿入成否のテストを行う」 聞き覚えのある、懐かしい声。そう、これは確か────。 「もう直、私の娘が完成する。あの忌々しい飛行機事故から十五年。残った大脳から作り出した愛娘よ! 今、お前を出してやる……」
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