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あの碧の匣の中に居る〝それ〟は、きっとこの全ての原因を知る者に違いない。どうにかして逢って、確かめなければ。
「……った」
もう、限界だった。誕生日の直前にも関わらず、家に閉じこもって、独りで悪夢と共に過ごしている。なんだかこの生活が、研究に没頭し脳みそと生活する父と被り、独りで嗤った。引き出しから睡眠薬を取り出すと、かぶりつく様に飲み込んだ。何錠かなんて数えない。数通り飲もうが、飲まなかろうが、関係ないから。
不安定な足取りでどうにかベッドへと辿り着くと、ゆっくりと、頭を刺激しないように横になる。
悪夢は終わらない。真っ暗な微睡みの中、悪夢を抱いて底へ底へと沈んでいく────────
「……あ」
私はまた、あの碧の匣の前に佇んでいる。機械音は飽きもせず同じ音程で鳴り響き、五臓六腑を震わせる。不快だった。機械音が頭痛とリンクし、より私を深淵へと誘う。
「……煩い」
全部、お前のせいなんだ。お前がこんな夢を見せるから。そんなにも私を愛しげに、寂しげに、呼ぶから。
だから私は、泥沼に浸かるように悪夢へと沈んでいくんだ。
鳴り響く機械音。頭痛。碧の匣。何かが蠢いて上がる水音。全部全部、壊してしまいたかった。破壊したい。ぜんぶ、きえろ。
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいッ!!」
頭を抑え、叫ぶ。警鐘が鳴るかのような頭痛。絶叫は頭に響くが、構わず全力で叫ぶ。
もうどうにも我慢がならなくて、水槽へと駆け寄り思いっきり叩く。
手は痛むが、それでも構わない。この手の痛みが頭痛すらも越えて、悪夢を忘れさせてくれるのなら。
水音が激しくなる。
隔たれたガラスの向こう側で〝それ〟も暴れているのかもしれない。もしかしたら、私の動きとリンクしているのかもしれなかった。
「出てこいッ! 殺してやるッ!」
ぬるぬるとする水槽を叩き続ける。でも〝それ〟は一向に姿を現さない。
頭蓋が割れるかの頭痛。余りにの痛みに、私は屈んだ。そして、今更気がついた。
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