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1. わたしをみて
社殿直上の月光に照らし出されて、彼女の身体は輝いている。
いや、本当に光を放っているのだ。透きとおった、かすかな赤色。怪しげな薄桃。瞳に宿る、血染めの赤。
その御姿とは天上より使わされたものであると。もしも今そう言われたら、いっそ信じてみてもいい。
「嘉瀬清音って、そう言ったよね」
彼女は。雛は、口だけで嘲笑った。
「清音。私と一緒なら、あなたの人生取り戻せるよ」
私の願いはかなってしまった。かなうはずのなかった願い。
利益は私に。報いは私に。私という人生を作る、私のすべてが私のもとに。
それを望んだはずだった。
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