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鶴が結局巫女として死ねないようなことがあったら、母は村の者たちに何と言われるだろう。鶴は歯を食いしばった。
七年前に領主の屋敷に入ってから、一度も顔を見に来ない母。そんな母の言ったことを今も守ろうとしている自分は 滑稽かもしれない。 でも。
鶴は水の中で、自分の肩と腰を結んでいる縄をほどこうとした。とても固く結ばれていて、なかなか結び目がほどける気配がない。
しかしそれは急にするりと解けた。体が自由になり、不意に川の流れが速くなったように感じた。
鶴の体が水中でふわりと浮いた。次の瞬間つるの体は流れに強く押し出された。足場を確保しようとしても滑り、川下のほうへとすごい勢いで鶴は流れていく。
みぞおちまであると思っていた水位は、鶴が立っても足がつかないほど高かった。
鶴は沈み、水を飲み込んだ。咳き込んだ拍子に、また水を大量に吸い込んだ。
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