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序
ちょっと太めの40代主婦、加奈子はリビングでお昼のゴールデンタイムのTVを見ながら煎餅をかじっていた。
どの国のTVでもゴールデンタイムは戦争、拷問、捕虜を使った人体実験一色なのが一般的だ。
家族で見られるからである。
日本では、若手の美しい俳優が活躍する戦隊もの、海外ドラマも一部の主婦のハートをつかんでいたが、物語をたしなむことができるのは、内面の豊かな人である。
伝統的な兵隊ポルノは、他人をこき下ろす方がドラマの何倍も面白い主婦たちの間で、長年根強い人気を博していた。
残暑の昼下がり。加奈子と近隣主婦たちは、連れ立ってスーパーのクリアランスセールの残り物、色もデザインも今一つのブラジャーをあさっていた。
今年の夏の流行は、アニマルプリントに真紅のレース。
しかし、若いモデルがケモノ娘のようにかわいくなるのと違って、さえないおばさんブラジャーがそれだと浮いた感じにならないか、バランスが問われることになる。
彼女たちはアニマルブラジャーを選びながら、さえずりあった。
「ねえ聞いた? 高崎さん、自殺しちゃったんだって」
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