妻は女

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 私の妻は冴えない女だ。だが、私を愛してくれる良い妻だと思っている。  夜の営みも定期的にしている。私から誘うことがほとんどだが。  私、竹内悠人(ゆうと)35歳だ。  普通のサラリーマン。あまり、昇格に興味がない。  子供はあえて作らない。子供がいるとやりたい事など出来ないからだ。 「お帰りなさい」  妻の涼子が出迎えてくれた。 「ただいま」  自室は2階にある。涼子とは別部屋だ。  2人のライフスタイルが違うので自然と部屋は分かれた。  妻は、映画好きで夜中まで起きている。朝は私が朝食を取らないので会社に行く間際まで寝ている。一応、いってらっしゃいはしてくれるが。  明後日は結婚記念日だ。  プレゼントは何にしようか悩んでいる。  部屋着に着替えて下へ降りた。  テーブルには1人分の食事が置かれていた。  涼子は、見たことのないスーツを着て、綺麗に化粧もしている。 「悠人さん、今日は映画サークルの会があるから」  え?映画サークルの会?  涼子は私の顔を見ないで高めのヒールを履いて出て行った。  聞いたことのないサークル、見たこともない美しい妻。  その日から、毎週金曜日は映画サークルの会に行っていた。  サークルに参加する様になって妻は私に冷たくなっていった。  夜の営みもなく、ハグもキスもない。土日も家にいなかった。  涼子は、妻ではなく、女になっていった。  怖くて何も聞けなかった。  私は弁当屋で弁当を買って帰る事が増えた。  冷たいあの人と言う映画があった。妻と一緒に観た。  私はTSUTAYAに寄ると冷たいあの人を借りた。  自宅は真っ暗だった。  ひとつひとつ電気を付けていく。  台所にあるテーブルに買って来たものなどを置いた。  自室で部屋着に着替えて手を洗うと冷蔵庫へ。ビールを取り出した。テーブルに置くと椅子に座ってビールを開けた。ひと口くちにすると席を立ち、借りてきた冷たいあの人のDVDをトレイに乗せスタートボタンを押す。  映画は、同僚の男性があいさつを交わしてくれないところから始まる。  私はビールをちびちび飲みながら映画を観た。  うちの冷たいあの人は一体どうしたというのか!  涙が溢れてくるのがわかった。  ツメタイアノヒトハ、イマ、ナニシテル?        
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