冷たいひと

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「ねぇ、君は「夏」ってなんだか知っている?」 見渡す限り雪に覆われた大地、灰色の雲で埋め尽くされた空。白と灰色の世界の中に、ぽつり、ぽつりと枯れ木が佇んでいる。世界はしん、と静まり返って、たまに木の枝からパタリ、と雪の落ちる音が響く。 突き刺すような冷たい空気の中、リクは8歳にしては小さなその体を、寒さで更に縮こめるようにして座っていた。 透き通るような白い肌、クルリとカールした黒い髪。オオカミの毛皮で裏打ちしたコートに、厚底のブーツ、ふかふかのマフラー。防寒対策は万全の筈だけれど、その無防備なほっぺたは寒さで赤くしもやけになっていた。 「ねぇ、「夏」って知っている?」 もう一度訪ねたその言葉は、白い息とともに吐きだされて空気中でキラキラとした氷の粒になって霧散した。 リクの隣りに座っていた「人」がウン、ともウウン、ともつかぬ風にその頭をゆらり、と揺らす。
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