冷たいひと

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それを「人」と呼んでいいのだろうか。 倒れて横たわる木の幹の上、リクと並んで、膝に手を置いてまっすぐ背筋を伸ばして座っている「それ」は、立ち上がれば優に二メートルを超えるだろう。 白いシーツをすっぽりとかぶってそこから頭と腕を出しただけのような、服とも呼べない粗末な布切れを身につけている。腰まで伸びた長い灰色の髪は、針金のようにまっすぐで尖っていて、「それ」の顔は髪の陰に隠れて窺い見ることは難しい。でも髪の隙間から覗くぎょろりとした目には、確かに知性の光が宿っているように見えた。 リクが「それ」に出会ったのは、一年程前だったろうか。
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