冷たいひと

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リクは、他の子供たちに比べて少し、(お母さんによれば「本当にほんの少しだけ」)ゆっくりな子供だった。 皆が早口で喋る言葉はリクにとっては量が多すぎて、それを頭の中で咀嚼してようやく自分の意見を述べようとするときには、もう皆はとっくに次の話題に移っているのだった。 お父さんとお母さんがたまに顔を見合わせて、どうしたものかな、という風にため息をついているのをリクは知っている。 でもだからといってリクは学校の他の子供たちが言うような「とんまなのろま」ではなかった。ただ他の人よりも深く物事を考えて、注意深く意見を述べるだけだ。残念ながら、それに気づいている人は周りには居なかったけれど。 「短い人生なんだ」とお父さんはお母さんに言っていた。「あと20年やそこら、多少人よりゆっくりしていたとしてもなんとかなるだろう」
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