冷たいひと

8/15

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
リクはシロと一緒に沢山絵本を読んだり、お話をしたりした。絵本の中にはリクの知らない世界が広がっていて、リクの知らない生き物が沢山いた。 「ねぇ見てよ」とリクは言った。 「うさぎっていうんだって。この白いフワフワの生き物。ピョンピョンとぶって書いてあるけど、頭に羽根みたいなものがついているからきっとそれをバタバタさせて飛ぶんじゃないかなぁ」 シロは、どうだろう?と言う風に首を傾げた。 ある日、リクはいつもの場所に白い紙を持ってやってきた。 「見てよシロ、今日学校で君の絵を描いたんだ」 紙には白い服を着て針金みたいな髪をツンツンさせたシロの絵が元気いっぱいに描かれていた。リクはそっとその紙をシロの膝の上に置いた。シロは、まじまじとその絵を眺めているようだった。 喜んでいるんだな、とリクは思った。 「また描いてきてあげるね」と言うと、シロはこっくりと頷いた。 その日、家に帰って布団に入りながらリクは思った。 「そういえば、シロはどこに住んでいるんだろう」 あの森のどこかにおうちがあって、もしかしたら今日あげた絵を大事にそのおうちの壁に飾っているかもしれないな。その想像はリクの胸をほんわりと暖かくして、リクは布団の中でくすくすと笑った。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加