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次の日、リクがいつもの場所に行くと、シロはいつもと変わらない風に倒れた木に座って待っていた。その足元から少し離れた場所にちんまりと、雪で作った何かが置いてある。
丸い体に、頭から突き出した二本の雪の羽根。
「うさぎだね」とリクは嬉しそうに言った。きっとこれは、昨日あげた絵のお礼なんだな。リクは嬉しくなって、雪の上でぴょこぴょこと飛び跳ねてみせた。シロの頭がゆらゆら揺れて、それはまるで笑っているみたいだった。
「ねぇでもこのままにしておいたら、雪が降り積もって明日の朝にはいなくなっちゃうんじゃないかな?」とリクが不安そうに言うと、シロは、心配ないよ、と言う風にゆらゆらと首を振ってみせた。
そして、シロの言う通り、何故かうさぎの上に雪は積もらず、だから雪うさぎはそれ以来ずっとそこにあって、リクとシロがお喋りするのを眺めていた。
ある日、リクは図書館で見つけたとびきり素敵な絵本を持って、シロの元を訪れた。
「見てよシロ、この本はね、昔々世界がどんなところだったかっていうお話なんだ」
そして言ったのだった。
「ねぇ、君は「夏」ってなんだか知っている?」
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