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「今日はねプレゼントを買ってきたんだ」
「え、なんの日だったっけ?」
鞄から和也は小さな箱を取り出した。
この小箱を、まだ見ていないのに和也の雰囲気から感じ取れたのだとしたら、自分がじぶんで怖くなる。
「いいじゃないか、記念日じゃなくたって」
確かにそう。どこかの歌人が書いてたっけ。些細なことでも記念日にすれば、それはもう記念日。
でも和也はそんなタイプじゃない。よく言えば男らしい。悪く言えば自分勝手。ほんとの記念日も忘れちゃう男。
和也は少年みたいな目をして、わざわざ妻の手を取り、その小箱を渡した。
戸惑いながら、裕美は小箱を見つめた。
「見てないで開けてみて」
「う、うん」
中から出てきたのはオルゴール。ちいさな天使がふたり向かい合う。
「どう?鳴らしてみてよ」
言われるがまま、つまみを回した。
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