Over 80

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胃もだいぶ下がってきた感覚がある。 それよりも何故、コース料理に重めのジャガイモ料理が2品もあったのか。 これ以上は危険だ。 康夫はこれより先、何がきても口にしない そう固く己に誓った。 「わあ、尾嵜さん。全部食べてくれたんですね。ありがとうございます」 「い、いや。別にこのくらい」 自分の渡したものを受け取ってもらえて、杏は異常すぎるほど喜んでいた。 「尾嵜さん、尾嵜さん、きましたよ」 杏が目をキラキラさせながら見つめていたその先には、ガトーショコラを持った店員がいた。 だめだ。 なんてタイミングで持ってきやがるんだ。 「坂根さん?」 「はい?」 「いる?ガトーショコラ」 「いえいえ!そんな悪いです」 「いや、さっきいろいろもらっちゃったからさ」 「いいえ!だめです先輩」 頑なに受け取ろうとしない杏は、フォークでガトーショコラを食べやすい大きさに切ると、康夫の口まで持っていった。 「出されたものはちゃんと食べないとだめです」 どの口が言ってるんだ。 顔に出ていないので気づかなかったが、杏は結構酒を飲んでいた。 そのせいもあり、割と大胆なこともしてきた。 後で気づいたが、康夫は少し心拍数が上がった気がした。 結局、ガトーショコラも、全て杏に食べさせてもらい完食した。 「ついでに私のもどうぞ」 杏の暴走は止まらなかった。 そのまま2つ目も完食する羽目となった。 口溶けは滑らか。 ところどころ顔を出すザラメがいい演出をしてくれた。 だが、康夫にとってこれは、罪深きことであった。 最初から計算を重ねたのに、一瞬の判断の迷いで。 「せーんぱい。尾嵜さーん」 宴もたけなわ、気分上々で店から退散しようとしていたところで、康夫を呼ぶ声がした。 「楽しかったですね」 えへへと笑顔を見せて、康夫の肩を叩いた。 「そ、そうだね」 同調しきれないことに、申し訳なさを感じつつも、そのまま全体的にあっさりと解散となった。
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