Over 80

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「そうだ。あの時、判断を間違えなければ」 康夫は当時を振り返り、体重計の上で拳を握りしめる。 その握り拳からは、紅色の涙が滴った。 悔やんでも悔やみきれない。 犯した罪は消すことはできない。 こうして数字となって、今も残っているのだから。 「くそっくそっくそ」 康夫は拳で壁を叩いた。 力の限り。壁が薄ら赤くなっていく。 そのとき、体重計に乗せた両足の間、踵のあたりで何かが動いた。 そして、驚くことに体重計は79キロを示していた。 康夫は目を丸くして、2度見した。 さっきまでの数値は? そして何が動いた? 康夫が振り返ると、寝起きで髪がぼさぼさの杏が子供っぽい笑顔をして立っていた。 「もしかして今、体重計に足掛けてた?」 杏は自らの足で、康夫が測定していた体重計に荷重を掛けていたのだ。 「えへ。やっくん、鼻くそでてるよ」 杏は満面の笑みで言った。
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