18人が本棚に入れています
本棚に追加
洗面所の棚の下から何か板を取り出した。
体重計だ。
康夫は己の鼓動を肌で感じた。
いやだ、乗るな、やめろ、くそったれ。
心音がそう言ってるように聞こえた。
ゆっくりと足を体重計に乗せる。
この時点で既に、20という数値を示していた。
康夫の鼻息が荒くなった。
左の鼻の穴から、鼻くそがぴこぴこしているのにも気づかなかった。
目も見開いた。
この頃は、コンタクトレンズの交換も怠っていたので、目がしょぼしょぼして、目の前が霞んだ。
目がしょぼつくのは俺がショボいせいか?
そんなことを考えるのも嫌になり、力の限り目を擦った。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あーーー」
天地を引き裂くような叫び声がした。
コンタクトがソフトレンズだったので、擦り過ぎたせいで、くしゃくしゃになった。そのくしゃくしゃになったままのコンタクトで、眼球を擦ったのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
勝負の前から、息切れが止まなかった。
最初のコメントを投稿しよう!