プロローグ

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 家庭教師の仕事がなくても他のバイトを見つけないといけない。せめてニ万円くらい稼げたら、と私は自転車で通えるところにあるファミレスで働くことにしたの。三年生の中野光男さんとはここで知り合ったんだ。彼はバイトのくせにチーフで、学生スタッフのシフトを組んでいた。だから話す機会も多く、頼りになる存在でもあった。  実際、正社員からも信頼されていたし、店内を歩き回る姿形も美しかった。バイトを始めてひと月後、仕事帰りに私は誘われるまま彼のマンションに付いていき、男女の関係になった。  今思えば、自分の中に思い上がりがあったのかもしれない。私は自分の容姿に自信があった。誰かと歩いている分には背がもう少し低い方が良かったけれど、ひとりで町を歩いててショーウインドウに自分が映ると、そのスタイルの良さに心が踊ったもんね。  私は付き合う男性にも、何よりまず容姿を求めていた。中野さんはハンサムで背も高く、だから私は彼のマンションに入ったのだと思う。でも彼は最低の男だった!  爽やかな笑顔も立ち振舞いも、すべて女をモノにするための小細工であり、私もその手に引っかかってしまった馬鹿な女のひとりでしかなかったの。それでも最初は彼の誠意を信じていたわ。でも半年経って、彼の女遊びがおさまらないことを知り、別れた。  それで中野さんのことは忘れてたのに、やがてキャンパス内やファミレスのスタッフルームから、彼が私との夜の生活について、まわりの友人知人にペラペラと喋っているらしいとの噂を聞いた。こんなことをしたら喜ぶ、彼女にあれさせた、これしてもらったなんてことを面白可笑しく暴露しているそうで、私は友人たちからそのことを聞いたの。  私はとても激しくショックを受けた。駄目な男だとは思っていたけど、そこまでとは思っていなかった。私はすぐにファミレスのバイトを辞めた。  それですぐに次の仕事を見つけなければならない。で、選んだのがコンビニだった。遅いシフトのときは深夜二時までというのがあるから、用心のために近所の店を選んだ。  でも、ここでも悪運は続いてるの。店長というか、経営者の息子が私に言い寄ってくるのよ。ドライブ行こうとか、家に来いとか。断り続けていたけれど、そのうち帰りに後を付けられ、部屋まで知られてしまったの。  バイト先を替えようかと友人の谷本信子に相談すると、いい占い師を知ってるよ、と紹介されたので行ってみたの。 「あなた、ちっとやそっとじゃ男運は良くならないわね。なんか、とんでもなくおかしな、ってゆーか怪しげな男に出会わない限り、その悪運は離れてくれないねえ。バイト先を替えるかどうか?どっちでも結果はおんなじよ」
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