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「なあ」
「なによ」
「教科書見せてくれないか、まだ届いてないんだよ」
「しょうが無いわねぇ」
正直、クチもききたくないが、お人好しのあたしは見捨てることもできない。机をくっつけ、教科書を見せながら、授業の進み具合を説明する。
御甲斐も素直に聞き入れてくれて、前の高校との違いを質問してくる。あたしもできるだけ答えてはいるが、なにせ成績は中の中、……すいません盛りました、中の下です。なので答えられないこともある。
最初は遠慮気味に訊いてきた御甲斐も、だんだんそれがなくなって、言葉もぞんざいになってきた。
「はあ、こんな問題もわからないのか。おまえ大丈夫かぁ」
何度目かの分かんないの言葉の後に、御甲斐があきれ顔でそう言うので、あたしはキレた。
「うっさいわね、分かんないものは分かんないのよ、親切に教えてやってんだから、そんな言い方ないでしょ」
「親切に教えるってのは、こっちが解るようにやるんだよ。分かんないなら教えてねぇだろうが」
「なによその態度、こっちが哀れんで下手にでているのに、そんな言い方ないでしょ」
「いつどこでだれがとのように下手にでたんだよ、ずっと上から目線だったろうが」
「誰が上から目線よ、そんなことしてない、あたしはそんなことしてない」
「言ってただろうが、しょうが無いわねぇとか、はぁあとか、いちいち言うんじゃねぇよ」
授業中にもかかわらず大声で言い合って、しまいには互いに立ち上がり、肩をお互いどんと突き合い、取っ組み合いのケンカとなってしまった。
「いい加減にせんかぁ」
国語の北方先生の一喝で互いに我にかえったので、いちおう止めたが、そのあとは互いにクチをきかなかった。
あとで聞いた話だと、監督不行き届きということで、北方先生が教頭先生に注意をうけたらしい。それを知ったあたし達はさすがに悪いことをしたと思い、二人で職員室に謝まりにいった。
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