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「御甲斐はさ、シゴキの現場を見てやり過ぎだと上級生に詰め寄ったんだよ。そしたら部外者が首を突っ込むな、下級生のくせに生意気だって言ってきたんでケンカになったんだ」
「……もしかして先に手を出しちゃった」
「うん」
──あちゃぁ──それでかぁ──
「でも野球部としても不祥事になるから内々に済んだんだけど、御甲斐は危ない、いつまた問題起こすかもしれないから転校させろという話になったんだって。そう聞いてる」
青地はそれだけ言ってから、タカコに向かって頼みだす。
「佐藤、頼むから誰にも言わないでくれよ。これが表ざたになったら甲子園に行けなくなる。御甲斐が話さない理由は同級生がレギュラーに選ばれているからなんだ、上級生も大人しくなってるからさ、頼むよ」
──御甲斐が黙っている理由はそれなのか──
必死に頼みこむ青地に、ついわかったとあたしとタカコは言ってしまった。
※ ※ ※ ※ ※
帰り道、あたしたちは頭を抱える。
「どうする心? 明日になったら二人とも登校してくるよ。そしたらまたケンカになるかもしれない」
「タナカに説明すれば、というかタナカだけに理由を話せばいいかな」
「んー、タナカを信用しないわけじゃないけど、そこで話が止まるとは限らないしねー」
「御甲斐も御甲斐よねー、まあらしいっちゃらしいんだけどさー。あのお節介め」
「心も大概だけどね」
「はぁー? あたしはあんなのじゃないわよ」
「……自覚無しか……」
タカコがやれやれという顔をする、あたしってそんなふうに見られているのかな。
※ ※ ※ ※ ※
翌日、登校するとクラスの中が異様な空気となっていた。
やっぱりこうなったか。
タナカと御甲斐が登校すると、さらに空気が重くなる。
仲の悪いとわかっている人たちと一緒にいるのはツラい。いつなんどきケンカが始まるか分からないからだ。
みんながイライラの空気とピリピリの空気を発生させ、それが混ざりあって不穏な空気となっている。
「御甲斐ちょっと」
ザワっとどよめく。声をかけたのは他でもない、あたしだった。
「なんだよ」
「いいからちょっとついて来て」
有無を言わさず廊下に連れ出して、対面する。
「で、なんだよ」
不貞腐れてる御甲斐に、あたしは昨日、元の学校の生徒に会ったことを話した。
「おま、なんでそんなこと──お節介め」
「お節介は御甲斐でしょ、転校するほどの目にあっても揉め事に口出しするんだから。それでどうするの? このままだんまりを決め込むつもりなの」
「御安にはカンケーねーよ。しゃしゃり出てくんなよ」
「そうはいかないわよ、あたしは──御甲斐の世話役なんだから」
「世話焼きニョーボか」
「誰が女房よ、このお節介」
「うるせぇ、世話焼き」
「お節介」
「世話焼き」
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