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なんでそうなるの
「んん、そろそろ教室に戻ってくれるかな」
振り返ると、担任の高馬先生がなんか嬉しそうな顔で立っていた。
「御甲斐、御安、話があるから中に入ってくれ」
「「は、はい」」
教室に戻ると、皆んな着席時していて、こちらを見てニヤニヤしている。
タナカにいたっては毒気を抜かれたような顔をしていた。
あたしと御甲斐は顔を赤くして席につくと、高馬先生が話し始める。
「さて、HRを始める前に話しておきたい事がある。御甲斐」
高馬先生に名前を呼ばれて、本人だけでなくクラス全員に緊張が走る。まさかまた転校とかなんだろうか。
「よく我慢したな、お前の粘り勝ちだ」
御甲斐がキョトンとして訊き返す。
「先生、それはどういう意味でしょうか」
「理由を話す前に皆んなに説明するな。変なデマが流れたようだが、御甲斐は前の学校でイジメをしたから転校してきたんじゃない、むしろそれを止めた方なんだ」
その言葉にクラス全員がざわめく。先生は静かにするように言ってから、転校してきた事情を話した。
※ ※ ※ ※ ※
「そんな、それじゃ御甲斐は被害者じゃないですか」
「そうだな。だがそれを甘んじて受けたのは理由がある。レギュラーになっている同級生のためだったんだ、不祥事を明るみにして出場停止にならないようにな」
それを聞いてタナカが立ち上がる。
「バカヤロー、だったらそう言えよ。オレがバカみたいじゃないか」
タナカだけじゃない、全員がそう思ったろう。だけどだ。
「先生、皆んなに話しちゃっていいんですか」
あたしの質問に、先生は笑顔でこたえる。
「ああ。なぜなら別ルートで不祥事が明るみに出てしまったんだ。◯◯工業高校のOBで現役の選手が昨夜暴行事件をおこしてしまった、先ほど速報でニュースになっている。──ケータイとスマホを出すんじゃないぞ」
と、言われても我慢できない。
クラス全員がめいめい確認する。たしかにネットニュースのトップに来ていた。
[◯◯工業高校野球部の闇にメス 慢性的な暴力行為に自殺未遂者も]
「……なんでこんなことに」
「それを今から説明するからしまえ。いいか、ネットニュースを集めた話だから確証はないがあらましはこうだ。
OBの選手がたまたま後輩にあったらしい、懐かしさのせいかつい高校時代のノリで小突いたところ他の人から嗜められたそうだ。
しかしムキになって、これくらい普通だと言って日常的に暴行行為をしていると話してしまったらしい」
そのあと紆余曲折を経て、マスコミ沙汰となりおおやけになったそうだ。
「御甲斐、円満解決とはいかなかったが、担任としてはお前の濡れ衣がはれてよかったと思ってる。もう我慢しなくていいからな」
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