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ギシッ
音が近づいてきている。恐怖で思わず布団を強く握りしめてしまう。ヤバイヤバイヤバイ、このままだと私終わる……。しかもこんな時に、無性にトイレに行きたくなってきた。別の意味でもヤバくて、私終わりそうだ。
ギシッ
近づいてきてる。ああ、もうダメだ。恐怖心も膀胱も耐えられそうにない。頭の中で、森沙耶、終了のお知らせが流れる。
「何バカなこと考えてんのさ」
「ヒッ」
私の後ろから、いきなり声が聞こえた。ビックリした拍子に、ちょっと出てしまった。何が出たかは聞かないで欲しい。
「大丈夫、安心して沙耶」
大の優しい物言いに恐怖心が和らいでいく。ああ、さっきはバカにしてごめんなさい。毎日、お供えします。
「布団は濡れてないよ。パンツだけだから、履き替えれば大丈夫だよ」
そっちかい!
見て見ぬふりしろや、このセクハラクソ神。嫁にいけなかったら、お前の責任だぞ。一ヶ月、お供え無しだ。
「うそです。うそです」
えっ、布団まで濡れちゃってるの。
「いや、それは違くて、あ〜もう、とにかく侵入者は僕が何とかしてくるから」
そう言って、大は空中を浮いたまま廊下に出た。
ギシッ
「早く帰れ、この痴れ者が。僕は早く沙耶の誤解を解かないといけないんだよ」
大は両手を前に出して、何か唱えている。何か陰陽師みたいでちょっとカッコいいな。
「破っ」
おお〜、これはテレビや映画で見たことあるぞ。やられた相手が飛んで行ったりするんだよな。さて、どこまで飛んでったかな。
ガキィィィィン
えっと……
廊下の柱に何か銀色のモノが刺さっているんですけれど。私の見立てでは、ナタに見えますが。で、知らない男がそのナタをまた振り上げてこっちに近づいているんですが……。
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