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一年か。
それなら、僕が先輩だと断言したことにも納得がいく。
「それで。君は僕に何が言いたいの」
「いえ。変わった人だなーと思ったので」
先輩だとわかっても、この後輩は敬語を使わない。
別に気にするつもりもないけれど。
「本当に、変わった人……」
でもこれは気にするだろう。
「近くない?」
「んー…、どうでしょう。まだ遠いかもしれませんよ」
「いや、ここまで近くにいて遠いはないよ」
顔がもう触れそうな位置にまで来ている。
これで先程の発言を本気で言っているのなら、今すぐ病院に行ったほうがいいだろう。
キーンコーンカーンコーン
そこで、チャイムが鳴った。
授業の終わりを知らせるチャイムだ。
「それじゃ、ここまで。僕は教室に戻るよ」
「あれ、そうですか」
物悲しそうな顔をほんの少し浮かべて、けれど邪魔をすることなく、彼女はどいた。
*
サボった後の教室に入る。
すでにある程度のクラスメイトは固まって集団を成していた。
「あ、帰ってきた」
ある程度の人数がこちらを向いて、すぐにいつも通りの行動をする。
いつも通り、変わらない。
「……ごめん、どいて」
机を椅子にして話している相手に伝える。
慣れているから、それ以上の会話はない。
数分して、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、先生が入ってくる。
「はーい。今は……全員いるな」
先生が教室を見回して、僕を見る。
「それじゃあ、前回の続きから教科書開けー」
そして、授業が始まる。
いつも通りに、いつもと同じ人間が喋って、いつもと同じ人間が答える。
ルーティーンのようなもの。
いつからか、間違い探しが日課になっている。
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