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やって来たネコ
大きなマンションが解体を待っている。
足場が組まれ、シートが張られているがまだ形は保っている。
そのそばに小さな鳥居があった。
近くに神社があるわけでもなく、ただ鳥居だけが建っていた。
その周りには投光器やシャベルがあり、こちらも解体される運命にあるようだった。
黄昏時の奇妙な雰囲気の中、何かが起こり、静電気のような小さな閃光の後で猫の耳の生えた女性が勢い良く宙に現れる。
ロールで着地を決めた後、立ち上がらずに体を低くしたまま耳を小刻みに動かしている。数十秒して立ち上がると同時に、人間離れした加速でリンクスティップをはためかせながらどこかへ消えていった。
それから何日か後の夜。
大量の重機が運び込まれ、昼間のように投光器で照らされた敷地の中。
パワーシャベルが鳥居の根本に迫っていた。
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